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01.15
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いきなり小ネタというか電波が飛んできたので、忘れないうちにメモしておきます。
現代版でさこみつ。どうも殿を弱らせたいみたいです。




三成からのSOSを受けたのは、ちょうど電車がホームに滑り込んできたとき。
金属同士がこすれ合う音は、普通に会話している声すらかき消してしまうのに、どうして吐息のようなあの声は聞こえたのだろう。
ほんの一言「さこん………」と伝えたきり沈黙した携帯電話。こいつはやばい、と左近は青くなった。
三成からのSOSはよくあることだが、今回はちょっと尋常じゃない。
踏み出した足をくるりと返した左近、きっかり10分後には三成の部屋の鍵を開けている。
カーテンを閉めきった部屋の中、ベッドの盛り上がりは、そこに人が寝ているとは思えないほど。
赤茶色の髪の毛が、掛け布団と敷き布団の間にくしゃくしゃ挟まっている。
「三成さん」
声をかけたら、細い腕がもそもそ掛け布団を引き下げて、塩の色に近い顔が涙目で左近を見上げてきた。
「すみません、遅くなっちまいました。いつものですか?」
腹痛か、それとも頭痛か。そう聞いたら、首が小さく縦に揺れた。
「くすり……飲んだら、効きすぎて………」
ひどい腹痛と頭痛持ちの三成、医者から薬を処方されている。どうやらその薬が効きすぎて、かえって具合が悪くなってしまったらしい。
少しすればよくなるから、とか弱く呟いた声に、まだ心配ではあるものの、ひとまず左近ほっとする。
額にはりついた髪を掻き上げてやる。陶器のような滑らかさは、こんなときでも変わらない。
「傍にいますから、ゆっくり休んでください。様子を見て駄目なようなら、医者に連れて行きますから」
小さく頷く仕種が、いとけない子供のようで。触れるだけのキスを、額と瞼にひとつずつ。
三成がほんの少しだけ微笑んだのに、左近も微笑みで応えた。
「忙しいのに、すまない……」
「お気になさらず。こういうときに頼りにされない方が、よっぽど俺には堪えますからね」
「うん……頼りにしている、左近……」
華奢な作りの手をそっと握って。三成が眠りに落ちるまで。

ふたりで暮らすにちょうどいい広さの部屋を、左近が探し始めるのがその少し後のこと。
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